貴重な体験 
令和元年5月22日、仏像彫刻教室でいつも快く接して下さった方が亡くなられました。
享年86歳。その方は某商事会社に勤務されていたころ、ご家族と共に海外生活をされていました。
背も高くダンディでスポーツマンであり、仏像彫刻の他クラシックギターも楽しんで
おられました。彫刻の腕前は私よりも数段上でした。

5年ほど前から神経性の足の痛みが増して歩くことも困難になり、教室を退会して治療に
専念されていたが徐々に体力を無くす中で会社の同僚、友人、ご近所の方たちのお見舞いよりも
私が寄せてもらうことを楽しみにしていることをご家族から告げられ嬉しく思いました。
亡くなられる数日前、寄せてもらったときに声掛けをすると、
目は閉じておられたが力を振り絞って私の手を握ってくれました。
それが最後の声掛けであり、体温の伝わりを感じました。

葬儀はご本人が生前に家族に告げていた希望により、会社の同僚、友人への知らせは
後日にして、自宅での家族葬で済ませました。
葬儀会社の方には形骸化された仏式葬儀の形を省けるだけ省き、祭壇には故人の写真の左右に
阿形・吽形、大日如来、聖観音菩薩の作品を安置して小ぶりの一対の花の設置を依頼しました。


 
   

広い居間で故人が好んで聴かれていた「望郷のバラード」というバイオリン演奏が流れる中での
読経という貴重な経験をさせていただきました。
お孫さんからCDの音量を聞かれ、読経との音合わせ?の貴重な体験ができたことは忘れません。

私は孫のバイオリン演奏で「マドンナの宝石」を聞きながら送ってもらえたらと思っている。

食事のとき長女の方が「父と母は高野山真言宗ですが、私を始めとして他の家族は海外での
暮らしが多いこともあって、クリスチャンです。
でも、子供のころおばあちゃんが南大師遍照金剛と唱えるのをよく聞いていたので、
何かお願い事があれば自然と南大師遍照金剛と言います」と微笑んでおられました。

キリスト教も仏教も教義への拘りはどうでもいい。只、素直に信じることです。

ご家族から死後の行事を尋ねられたので「次は四十九日、そのあとは気候の良い時期に納骨。
次に来年の一周忌、そして翌年の三回忌。これを*十大仏事と言います。
そのあとは拘ることはありません。
それよりも、ご主人であり、父であり、じいじである故人を想いだされたとき
右手はお父さん、左手は皆さん、南無は ありがとう と捉えて
    〜みぎほとけ ひだり衆生のすむ手のうちぞ あわせてゆかし 南無のひとこえ〜
との想いで手を合わせて下さい。位牌は要りません。
奥さんは達筆なので、厚手の色紙に戒名を記し、写真立ての横に添えて下さい」と
お話ししました。
*故人と奥さんは生前戒名を希望されたのでつけさせていただきました。

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ある奥さんから
「開眼、納骨のことですが今回は延期してもいいですか?
主人ひとりを冷たい土の中に入れるのは何か気が進まないので、私が亡くなったときに
一緒にお墓に収めて欲しいと子供に言いましたがそれでもいいですか?」
との相談をいただきました。
そこで私は
「いついつまでにしなくてはいけないという決まりはありません。
御主人と一緒でも何ら問題はありません」とお伝えすると
「安心しました。ありがとうございます」と微笑んでおられました。

これからも「送り送られる儀式」をどのようにすればいいか?の問い合わせがあれば
今回のことをお話しして、仏教と殆ど無縁の仏式葬儀に拘ることはありません。
法事を含む死後の行事は後世の僧侶が考え出したものでしかありません。
と答えていきます。


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*十大仏事

  七日毎のお参り×七回で四十九日(満中陰)
次に百日。次に一周忌。
  次に三回忌のことで、七日×7回・百日を1回・一周忌を1回・三回忌を1回としての
  合計で十回
十大仏事と言い、これ以外は強いて必要ありません。
  インドでは四十九日で終わりです。何故なら、四十九日で故人が成した善行・悪行
  何かに生まれ変わる。だから、生きているうちに良き行いをしなさいと教えている。
       これが、仏教本来の教えです。七日参りも強いて必要としません。


ほど遠くないうちに、こような儀式は強いて必要でないということが知られていくでしょう
  何故なら、仏教と葬式はほとんど関係ないことがネット等で知られるようになってきたから。

 仏式葬儀とは、かかわってはいけない僧侶が、どの仏典にも記されていない葬送儀礼を
 実しやかにやっているに過ぎない・・・ネットより

    
                   次回はメモ書きからです。   


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