姉夫婦

8月以来のUPで、今回は「姉夫婦を語る」です。

私には5歳上の姉と3歳上の姉、そして2歳下の妹がいます。
その妹も来年には後期高齢者の仲間入り。
5歳上の姉が小学校4、5年の頃に父が商売に行き詰まり倒産したあと母が見つけてきた内職を
手伝い、父も最初は「内職なんて」と乗り気ではなかったがやがて機械化も図り5年ほどで
何とか店を立ち上げた。
その間、姉は小学・中学生のときも仕事を手伝っていたので登校日数ギリギリで卒業しました。
姉には多くの友達がいて、その中に身体の不自由な子がいましたが学校へ行ける日は必ず
その子の家に寄り手押し車を押して行きました。

姉に手を引かれバスに乗り得意先に集金に行くと社長さんが「こっちへおいで」と言って
お菓子をくれました。
近くの公園でアッという間に食べたのを思い出します。
父母も頑張りましたが上の姉が通学日数を犠牲にして仕事を頑張ってくれたおかげで
次姉(じし)は私立女子高から短大へ、妹も私立女子高へ、そして私も私立中学・高校に行くことが
できました。

その姉が結婚相手に選んだのは店の職人さんでした。
父は「○○は浮田小町(父の勝手自慢)と評判で玉の輿は間違いないと思っていたのに
あいつと結婚てか!」と言っていましたが二人に押し切られたようでした。
二人とも中卒です。義兄も幼いころに母を亡くし、後妻さんからの言うところの継子いじめに合い
中学を出ると大阪に来て幾つかの職に就いたあと店に勤めることになったそうです。
ですから、苦労では姉と通ずるところがあり話し相手から結婚へと進んだのです。
ここからは義兄を兄と表します。

父が健在のとき私から「姉夫婦に暖簾分けをして欲しい」と伝えると父はポツンと
「お前からそれを言うとはなぁ」と応えてくれました。
得意先の部長さんは「軒下を貸して母屋を取られることにならないのか?」と言われましたが
「私たち姉弟にはそれはありません。私の店で出来ない分を他社に任せるのなら姉の店に
廻して下さい。そして、2軒で頑張ります」と伝えると「社長に伝える」と言って下さいました。
翌日、部長から社長は「君たち姉弟の頑張りを信じている」と言われたとの言葉をいただきました。
その会社は、ある業種ではフランス・アメリカの経済誌に乗るほどの会社です。

独立後も二人は自宅近くの借り仕事場へ朝7時過ぎから夜は9時・10時まで出向いて
本当によく働きました。
ちょうどそのころ三人目の娘も出来、兄は風呂敷に娘を包
(くる)んで首からぶら下げて仕事を
こなしていた。
そして3人娘それぞれを私立女子高・大学に進ませ、三味線・琴も習わせました。
義兄の還暦祝いのときに3人娘が着物姿で琴を弾くのを見て、兄は嬉し涙で見つめていました。
兄の自慢話?は「夫婦の最終学歴は○○自動車学校」でしたが、3人の娘が結婚したあと
カナダを始めとして多くの海外旅行やクラシック演奏を聴きに行くことを楽しんでいましたが
今年(2022年)3月に兄は姉と3人の娘、そして孫たちに見送られ他界しました。87歳でした。
葬儀で孫たちの悲しみを目にして、兄は本当に家族思いで家族に愛されていたんだなぁ。
と痛感し読経も涙声になってしまいました。

兄の趣味は、クラシック・ジャズを聴くことと読書だった。
口癖は「私は宗教的な悟りはわからない。凡人の嬉しさと日々の反省の繰り返し。それが精一杯」
だった。
それに応え私は「生産性のある凡人社会で暮らす凡人の悟りは、狭い教義に溺れ、狭い村社会で
暮らす坊さんよりも、はるかに勝っている。そして宗教に囚われず自然体で生き、日々達成観を得る
ことが本当の生き方だよ。素晴らしい生き方だよ」と答えた。

市井の人の実践から湧きだす人生論・人生観は活力と生きるとは・生き方にあふれています。
しかし寺を職場とし、僧侶を職としていると言っても過言ではない日本仏教は
全ての衆生を救い上げる大乗仏教の精神実践を忘れ去り、宗教の生命力を
失っているのではないだろうか?

これは私だけの意見ではない。某新聞にも同様の記事が掲載されていた。

兄が元気なときも今も週に1回ほどは自転車で10分位の姉宅に寄り、読経をほどほどに済ませ
電動マッサージ機で45分のフルコースで身体をほぐしている。
81歳の姉は弟の目からみても10歳は若く見え、水曜日は運動サークル、金曜日はフォークダンスを
楽しんでいる。先日、アルプスの少女ハイジーの可愛い衣装が壁にかかっていた。
そして、食事のときは写真を食卓に置いてタブレットで義兄の好きだった曲を聴かせている。
次姉も妹も私の妻も姉を慕っている。
皆が一日でも長く元気で暮らせることを願う日々です。


二人は中学卒です。でも、何事もその時・その時を一生懸命に向かって進んで行けば
求めなくても良き結果が芽吹くという人間学を実践してきた。
弟として自慢できる姉夫婦です。

                   次回は「気づく大切さ」です

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